あ〜あ、お酒くさいなあ…やんなっちゃうよ、もう。さっさと飲みつぶれればいいのにさ、いつまで飲んでるんだろこの人達。
あっ、もうそんなに食べないでよ、ボク達の食べる分がなくなっちゃうじゃないか!どうして海賊ってこんなによく食べるんだろ? 「よう坊主ゥ〜、もうすぐ母の日だけどよ、お前お母ちゃんになんかしてやるかい?」 「え?ハハノヒってなぁに?」 話しかけてこないでほしいんだけどな…。お酒がぷんぷんにおってきて気持ち悪いよ。 ああでもダメだ、みんなががんばってるんだから、ボクもがんばらなきゃ!そうしないとこの町のみんなごはんが食べれなくなっちゃうし、アンラッキーズにおしおきされちゃう。 だいたいお姉ちゃん達なんかこんなオジサン達にピッタリくっついたり肩だかれたりしてるもんな、だっこですむだけボクはマシだよ。笑顔、笑顔。 「何だお前ェ母の日も知らねェのかァ?」 「まあまだちっこいモンなあ」 「教えてやれよ、お前」 「おウ坊主、母の日っつうのはだな、母ちゃんに感謝するって日の事よ。その気持ちとして母ちゃんに花とか宝石とかプレゼントしたり、ウチの仕事を手伝ったりしてやんのよ」 「へえ、そんな日あったんだ」 ハハノヒ…母の日、だな、きっと。じゃあ父の日とかもあるのかな。ボクには関係ないけど。 「坊主、お前のお母ちゃんは?」 「さっき綺麗なシスターと一緒にいたろ、あれお母ちゃんか?」 「うん、そうだよ」 ウソ。ボクのお母さんは天国の神さまのところにいるんだもん。でもミス・キャサリーナのことをなんて説明したらいいかわかんないし、そう思わせとこ。 それに、ミス・キャサリーナ、ちょっとお母さんに似てるしね。 「あァ、さっきのシスターかァ。美人だったなあ、ここの町ァいいオンナばっかだな」 「なァ、坊主。ちょっとお願いがあるんだが〜」 ゲー。ひっつかないでよオジサン。無理に笑顔つくってるのにもっと笑えなくなっちゃうだろ。 「お前のお母さん、ちょっとあとでおれん所に来させて欲し…いてエっ!」 「あっ、ごめんねオジサン!」 オジサンだいじょうぶですかぁ、ちょっとおもいっきりイスから落っこちてオジサンの足ふんじゃったぁ〜いたそうですねぇ。 バーカバーカ、お前なんかミス・キャサリーナと話すのもさせてやんないぞ。 「ボクもう寝なきゃ。じゃあね、オジサン達もおやすみ!」 家の外に出てから、あっかんべ。 おやすみオジサン達、ぐっすり寝てね、よい夢を。アーメン、十字を切ってあげるから。 母の日かあ。お母さんが生きてた頃に知りたかったな、たくさんたくさん感謝したのにさ。 やっぱりボクには関係ないや、おかあさんがいないんだもの。…あ、でもミス・キャサリーナ。ミス・キャサリーナにもいっぱいお世話になってるし、おかあさんみたいだし、ミス・キャサリーナにも感謝したいな。 そういえば、母の日っていつなんだろ? 「え?母の日?…ミス・マザーズデーがどうかした?」 ミス・マザーズデー?えっと…Mr.6のペアの人だっけ、その人がどうしたの、ミス・ウェンズデー? 「あ、母の日ね、母の日。ごめんなさい、ついミス・マザーズデーのことかと思ってしまったわ。え?ええ、”マザーズデー”って、母の日のことよ」 へえ、そうだったんだ。前からなんのことだろって思ってたけど。じゃあもしかして、ミス・ファーザーズデーは父の日のことなのかな?ま、いいや。今はそれより… 「母の日は今週の日曜日よ」 「え、今週なの!?もうあさってじゃないか」 うわあ、どうしよう何すればいいんだろう。 「そうね、普通はカーネーションをおくるわ…でもこの町にカーネーションはないだろうし」 うそォ。そもそもカーネーションってどんな花さ、ボク知らないや。どうしてそんなむずかしい花にするんだろ、もっとカンタンな花にしてくれればいいのに。 じゃああとは…あのオジサン宝石おくるとかゆってたっけ。でも、ボク持ってないよ、宝石なんて。海賊船からとったヤツは全部町のみんなのものになるんだし。 「どうすればいいかなあ、ミス・ウェンズデー…」 「どうって…あなた誰に――ああ、ミス・キャサリーナ?」 「うん、そうだよ。おかあさんのかわりにミス・キャサリーナにいっぱいいっぱい感謝するんだ」 「そうね、あなた達本当の親子みたいに見えるし」 わ、ミス・ウェンズデーもそんなふうに笑えるんだ。いつもなんだかぴりぴりしてて、ちょっとこわいんだけど。 「ミス・ウェンズデーは母の日にはどうしてたの?」 「私?…別に何もしてないわ。母は私が小さい頃に…あ、いけない、ダメよMr.ビーンズ。我が社の社訓は?」 あ、そうだった!ダメダメ聞いちゃダメ。しっかりしろ、ボク。他のみんなはそんなことないのにボクってば時々バロックワークスの決まりをやぶっちゃいそうになるんだ。そのたびに、みんなが今のミス・ウェンズデーみたいにそれはダメなことなんだよって教えてくれる。 ボクはまだたったのななつで、子どもだけど、他のフツウの子どもならゆるされることでも、ボクはバロックワークスのエージェントだからどんなにちっさな間違いもゆるされないんだ。それはちゃんとボクだってわかってるんだ、失敗したらそこで終りなんだよ、サボテンのうえにボクの十字架がたてられちゃう。失敗しないように気をつけなくちゃ。 「何してるんだい、二人とも」 「あ、ミス・マンデー。Mr.ビーンズが母の日に何かしてあげたいんですって、ミス・キャサリーナに」 よかった、あとでミス・マンデーにも聞きに行こうと思ってたんだ。ミス・マンデーは何かいいことゆってくれるかな? 「母の日ねェ…花が無いんなら、何かプレゼントしたらどうだい?指輪とかネックレスとかさ」 「だってそんなのどこにあるのさ?この町にはそんなの売ってないだろ?海賊たちからとったのはどうせ町のみんなのものになるしさ」 「ああ、そりゃそうだ。じゃあそうだね…手紙でも書くかい?いつも有難うってさ」 「それ良いんじゃないかしら」 手紙かあ。うん、それならボクにもできるや。きれいな色紙を誰かにもらって、クレヨンなら持ってるし。 「ま、何にしろ真心がこもってりゃどんなモノでもいいのさ。どんなに値打ちの高い宝石なんかよりも、たった一言の感謝の言葉の方が嬉しいってこともある」 そうゆうものなの?だってぜったいお金が高いもののほうがよくないかな?海賊やっつけてありがとうってゆわれるより、お金もらったほうがうれしいよ。お金もらわないと生活できないしさ。 …あ、でも。なんとなくはわかるかも。ボクが初めてここに来て、初めて海賊をやっつけたとき(酔いつぶれた海賊じゃないんだぞ、ちゃんと意識のあるヤツだったんだ)、みんながよくやったなってほめてくれた。Mr.9なんかボクを高い高いしてさ。あの時はすごくうれしかった。そうゆうことなのかな? 「じゃ、ボク手紙書くよ!ありがとうミス・マンデー、ミス・ウェンズデー!」 あっ、そうだ。 「このことミス・キャサリーナにゆっちゃダメだぞ!ないしょでびっくりさせたいんだからさ」 「判ってるよ、モチロン」 「ええ、内緒にしておくわ」 そうなんだ、びっくりさせるんだ。 手紙にはなんて書こうかな?そうだ、絵とかもつけとこうか。 いつもありがとう?そんなので良いかな?これからもよろしく、とかさ。これから…そうだ、これから。そのことも書いとこ。 ミス・キャサリーナよろこんでくれるかな、くれるといいな。そうでなきゃ意味がないんだ。 全部、ミス・キャサリーナによろこんでもらいたくてやってるんだからさ。 うんそうだ、ボクはただ、ほめてもらいたいだけなんだ。 ボク、やりたくないことでもほめてもらえるんだったらやるよ、ミス・キャサリーナやみんながよろこんでくれるんならなんだって。 お母さんにはなんにもできなかった。お母さんはボクのために色んなことしてくれたのに。それでボクのために… お母さん。もっとお母さんといっしょにいたかったよ。神さま、どうしてですか… ボクの最後に見た記憶の中のお母さんは泣きながら笑ってる…… 泣かないでお母さん、もっと笑った顔が見たかった……… ミス・キャサリーナが教会の中でゆっくり休んでいると、ドアが開いて小さな足音が聞こえてきた。 「ミス・キャサリーナ!」 「あら…Mr.ビーンズ?」 彼女の小さなパートナー。手に何か手紙のようなものを持っている。 Mr.ビーンズはぱたぱたとミス・キャサリーナがいる所まで走ってくると、はあはあと息を切らしながらも嬉しそうな顔を上げた。 「ミス・キャサリーナ、だっこして!」 「抱っこ?」 ミス・キャサリーナはちょっと驚いた。 Mr.ビーンズは小さな小さな子どもである。だけど、普段は全く甘えるそぶりを見せたりしない。時々町の者が抱っこしたりすると、子ども扱いするなと怒ることさえあったけれど、ミス・キャサリーナにはそれが、無理して頑張ってるように思えて心配でもあった。 そのMr.ビーンズが今、自分から抱っこして、と言っている。 「そうだよ、早く」 「え、ええ、構いませんけれど…」 小さな体を包み込む様にして抱えあげると、思っていたよりもこの子はずいぶん軽かった。小さな腕で精一杯自分の首の周りに抱きついてくるMr.ビーンズが可愛らしく思え、ミス・キャサリーナはくすくす笑ってMr.ビーンズの目を覗きこんだ。 「どうしたんですの、Mr.ビーンズ。今日は甘えたい気分?」 「ううんと、あのね」 ミス・キャサリーナが首を傾げるとMr.ビーンズは内緒話でもするかのようにミス・キャサリーナにぐっと顔を近づけて、 ミス・キャサリーナの頬にキスをした。 「ミス・キャサリーナ、いつもありがとう。ねえ、今日って母の日なんでしょ?だからさ」 「…母の、日?」 ひどく驚いた表情のミス・キャサリーナとは反対に、Mr.ビーンズはにっこりと愛らしく笑っている。 手に持っていた手紙を、ミス・キャサリーナの顔の前に差し出した。 「はい、これ手紙。いつもミス・キャサリーナにはいろいろしてもらってるからさ、何かお礼したかったんだけど。ボクにできるのは手紙だけだったんだよ、ごめんね」 薄桃色の色紙に、色とりどりのクレヨンで、たどたどしく書かれた言葉。 その下に描かれた、女の人の笑顔の絵。 自分の顔だ。 手紙を読んでいる最中、ミス・キャサリーナはずっと言葉を失っていた。 手紙を持つ自分の手が微かに震えていることも、文字がぼんやり滲んだ事にも、気付かなかった。 「…ミス・キャサリーナ?」 Mr.ビーンズが心細そうに自分を呼んできた時さえ、彼女は涙が自分の頬をぬらしている事に気付いていなかった。 一筋の涙が、ミス・キャサリーナの頬を伝っていた。 「ミス・キャサリーナ…どうしたの?どうして泣くの、ボクのせい?ごめんね、ミス・キャサリーナ、泣かないで、ごめんなさい、ごめんなさい、泣かないで…」 自分自身も泣きそうになりながら必死で言うMr.ビーンズに、ますます涙が溢れてくる。 片手で涙をぬぐい、ミス・キャサリーナは微笑んだ。 「Mr.ビーンズ、わたくしは今とっても嬉しいの、だから泣いているのよ。涙が出るのは悲しい時だけではないのです」 ”自分達”には必要の無い、許されない思いだけれど、こんな世界に生きる自分たちには邪魔でさえある思いだけれど、この子の気持ちが嬉しくてたまらない。小さなこの子がいとおしくてたまらない。 ミス・キャサリーナはMr.ビーンズを抱きしめ、さっき、彼が自分にしてくれたのと同じように、彼の頬にキスをした。 心からの愛を込めて。 しんあいなるミス・キャサリーナえ。 ミス・キャサリーナいつもありがとう。かんしゃしています。 きょうは母の日です。だからありがとうを言おうとおもいます。 それはいつもおせわになってるからだけではありませんどうゆうことかというとミス・キャサリーナはぼくのお母さんに少しにてるからです。 かおとかがにてるとゆうわけじゃないんだけどでもお母さんみたいなふんいきなのです。 お母さんのにおいがします。 たまにミス・キャサリーナのひざのうえでねたりしますがそんなときによけいお母さんのことをおもいだしてちょっとなきそうになったりします。 お母さんはもういないからです。ぼくはお父さんはしらないのでお父さんはよくわかりません。お母さんはお父さんはどこかえいったとゆっていました。でもそれは神さまのところではちがうみたいですどこなのかわかりません。 ぼくはお母さんが好きです1ばんすきだけどこの町のみんなわ2ばんめに好きです。ミス・キャサリーナも好きです。 ぼくはまだ小さいのでいつもミス・キャサリーナに助けてもらってばっかりだけどぼくだってMr.8やMr.9みたいになるんですから。 もうちょっとしたらぼくもしょおかくして数字の名まえをもらってミス・キャサリーナもいっしょになるんだよMr.6がいいなどうしてかというとパートナーの名まえがミス・マザーズデーだからですにあってるとおもいます。 そうなったらミス・キャサリーナはうれしいですか?ぼくはうれしいですミス・キャサリーナもそうだったらもっとうれしいです。 町のみんなが笑ってるのも好きだけどぼくはミス・キャサリーナの笑ってるのとよろこんでるかおが見たいのですそれでぼくもうれしいです。 それがぼくのこうふくなんです。 |
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