指揮者のように優美に兄の手が振り上げられる。 その手を追って、一条のきらめくものが巻き上がっていく。 花々に彩られた大きな城を兄が生み出していく様を、彼はもう半時ほども眺め続けていた。 兄はママに贈る新しい飴細工を作っている最中だ。 指が躍り、くるりと回り、花衣がひるがえるたびごとに、透き通った城が出来上がっていく。窓から差し込む光がとりどりの飴細工の色を床に落とし、万華鏡のようである。 部屋の隅にずっと腰掛けている彼に、退屈ではないかなどと兄は訊ねない。 己の腕に誇りを持つ兄は、細工作りの一瞬いっしゅんが、決して見る者を飽きさせることはないと知っている。 「カタクリ、つまらなくはないのかね」 しかし、それとは別の意味を持った言葉を彼に投げかける。 「おかしな奴だよ、お前は。どうせ私がどんなものを作り上げるのか、お前には全て見えてるんだろうに」 兄の言うように以前まではそうだった。兄が最初の一振りをした瞬間に、飴細工が作られる工程から完成した姿までの全てが彼には見えていた。 それでも彼は兄がこうして奏でるようにあらゆるものを表していくところを見るのが好きだった。 「今は見聞色を閉じている」 カツンと靴を鳴らしてターンをした兄が、問うように軽く首を傾げた。 「ペロス兄の作るものは、いつも」 たった今、目の前で完成したきらきらしい花の城を彼は見上げる。 「未来で見たより美しい」 おかしな奴だ、兄は肩を震わせくくくと笑った。 |
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